皆さんは、現代の高性能住宅「ヘーベルハウス」が、実は伝統的なレンガ造りの家にルーツを持つことをご存知でしょうか?今回は、建材の歴史を紐解きながら、ヘーベルハウスが誕生するまでの興味深い物語をお伝えしたいと思います。
1666年、ロンドンで発生した大規模な火災「ロンドン大火」は、都市の建築史に大きな転換点をもたらしました。4日間にわたって燃え続けたこの大火により、市内の家屋の85%(約13,200戸)が焼失。この悲劇を機に、木造建築が禁止され、代わりに耐火建材としてレンガを使用した建物が急速に普及していきました。
しかし、レンガ造りにも課題がありました。高温での焼成工程が都市の環境悪化を招く恐れがあったのです。この問題を解決したのが、1866年に英国で発明された「サンド・ライム・ブリック」でした。珪砂と石灰石を混ぜてオートクレーブ養生するという新しい製法により、美しい白色の建材が生まれました。
建材の歴史は20世紀に入ってさらなる進化を遂げます。スウェーデン王立工科大学のヨハン・アクセル・エリクソン博士が、サンド・ライム・ブリックをベースに「ALC(軽量気泡コンクリート)」を開発。この新素材は、レンガ12個分の作業を1回で済ませられるほどの効率性を実現しました。
そして第二次世界大戦後、ドイツのヨゼフ・ヘーベルがALCブロックの内部に鉄筋を入れてパネル化することに成功。これが現在の「ヘーベルウォール」の原点となりました。
ヘーベルウォールは日本でも独自の研究開発が重ねられ、耐火性能、耐震能力、そして環境への配慮を兼ね備えた建材として進化を続けています。
最近では、歴史への敬意を込めて、耐久性の高い赤レンガ色の新しい外壁「ブリックバーミリオン」が開発されました。これは、レンガ造りの家からスタートした建材の歴史が、最新技術との融合によって新たな形で結実した証と言えるでしょう。
17世紀のレンガ造りから始まり、サンド・ライム・ブリック、ALCへと進化を遂げ、現代のヘーベルウォールへと至る建材の歴史は、人々の暮らしの安全と快適さを追求する技術革新の歴史でもあります。これからも、伝統を大切にしながら新しい価値を創造し続けるヘーベルハウスの挑戦は続いていくことでしょう。